連続インタビューダイスター 第5弾: 石見舞菜香×長谷川育美×天城サリー
──物語はいよいよ佳境を迎えます。最後の舞台作品となる『オペラ座の怪人』はオーディションの段階から、ここなたちの演技に圧倒されました。
石見 ここなが最初に考えたのは、舞台への憧れを抱いたファントムでした。これまでのファントム像といえば、怒りや憎しみという感情を表に出すことが基本でしたが、それとはまったく違うアプローチになります。ただ、実際にオーディションで披露したのは、もっと色々な感情を持ったファントムでした。これには静香ちゃんとの別れなどがヒントになっています。心の弱さや純粋さ、表舞台への渇望、苛立ち、嫉妬といった感情を取り入れて、ここなのファントムが出来上がっていきました。
──様々な感情を演じられていたのは驚きました。
石見 断片的に感情を切り替えて演じることになるので、難しかったです。感情によって一文に対するスピード感や、伝わりやすさも変わってきますから。また、怒りや嫉妬といった激しい感情はストレートに演じやすいのですが、憧れや静かな感情はどうしても声量が落ちてしまいます。舞台上で伝わるように声量を維持しつつ、感情を乱さずに演じることを意識しました。
──役者としての挑戦という印象を受けますね。
石見 最終話のファントムのアフレコは、気合を入れるためにスリッパを脱いではだしで臨んだんです。終わったあとは、「1本舞台を取り終えたんじゃないかな?」と思うぐらいの気持ちでした。
──カトリナのファントムも、圧倒されるほどの迫力を感じました。
天城 カトリナは超集中力のセンスを活かして、自分のファントムを作り上げていきましたが、私自身も「オペラ座の怪人」の様々なバージョンを見て勉強しました。そこでわかったのは、総じてファントムは憎しみを中心に描かれることが多いということです。ここなちゃんは、だれも見たことのないファントムを生み出しましたが、それならカトリナは定番である憎しみの感情を積み上げて、狂気的に演じようと思ったんです。オーディション後に、ぱんだちゃんとさっすーが「結局、柊さんのファントムの延長線上の演技だった」という話をしていましたが、それを突き止めた形ですね。
──八恵に練習の相手役を頼んだときも、誰も寄せ付けないほどの孤独感があらわれていましたね。
天城 「心ここにあらず」という感じでしたね。アフレコのときも、1点を集中して見つめつつ、瞬きも最小限で演じました。カトリナのファントムは、「今まで見たことがないファントム」というよりは、大舞台でも通用する「うまいファントム」になって欲しいというイメージでした。
──ここなのファントムを完成させるうえで、静香が見せた「怒りのファントム」も大きな影響を与えていますね。
長谷川 静香は舞台には立たないキャラクターなので、練習の場で「1つのセリフをポンと言う」という状況が多く、ファントムを演じたシーンもそうです。そこは自分の中でスイッチを切り替えて、一気に演じることを意識しています。
第十場の「私に演奏させろ!」というセリフは、ファントムの思いも重ねて、「自分も舞台に立ちたい」という思いも込めています。「舞台に立ちたいけど立てない」というファントムの立場は、静香にもリンクしていると感じられて。静香本人も無意識のうちに「演じたい!」という思いがあらわれてしまっているんでしょうね。
──八恵に「舞台に出ないんですか?」と言われて、舞台への思いを意識せざるを得ない状況になりますね。
長谷川 このあたりから自分の気持ちを、見て見ぬふりできなくなっています。周囲に隠せなくなっているほど、舞台への思いが溢れてしまっているんです。最終的に第十一場で、「ここなに感情を返す」という結論に至ったと思います。
──静香が第十一場で、ここなに感情を返すシーンは、とても感情が揺さぶられました。
長谷川 静香は、熱さはあっても、根本的には冷静な子です。それがあそこまで真正面から気持ちをぶつけるのは、ここなのためだからということが大きかったのだと思います。
──最終話に至るまでに、様々な経験を積んできた3人ですが、どんなところに成長を感じましたか?
石見 ここなは自分に自信がなく、いつも人の意見に左右されがちな子でした。それが最終話を目前にして、大きく成長を感じさせたのは、やっぱり静香ちゃんとの別れです。でも、ファントム役に受かっても満足できなかったのは、やっぱり静香ちゃんがいないとダメだからなんでしょう。幼いころの自分との対話で、「いつか一緒に舞台に立つ」という約束に気づいてからは吹っ切れたようで、弱弱しさは一切感じさせませんでした。
長谷川 ここなが強く成長していったことに対して、静香は逆に弱さを見せて行ったと感じます。序盤はここなを支える立場で、2人で1人という意識でしたが、「舞台に立ちたい」という思いが隠しきれなくなって、第十一場でここなに「気持ちを返す」ことを決断したんだと思います。もともと静香は自然と演じることができる役柄で、彼女の変化は意外に感じませんでした。「舞台に立つのはここなだから」と気持ちを押し込めてしまったのも、「そんなに強くいられないよね」と、自然に受け止めることができました。
天城 カトリナはここなちゃんと真逆で、全部1人で抱え込んでしまうタイプでした。でも、回を重ねるごとに仲間を頼ることの大切さに、気づいていったんだと思います。わかりやすいのは、ファントムのオーディションに落ちたとき。みんなの前で泣いてしまったのは、「ちゃんと弱さが見せられるようになったんだな」と感じました。第九場でお母さんのテレーゼさんが迎えに来たときも、「シリウスでダイスターになる」ことを選びました。仲間とともにダイスターを目指すことを決断できたのは、カトリナにとって大きな成長だと感じますね。
──最終話に期待していることや、見どころをお聞かせください。
天城 まずは第十一場までTVアニメ『ワールドダイスター』を応援してくださり、本当にありがとうございます。最終回直前ということで、一番気になるのは、「ここなちゃんと静香ちゃんの関係はどうなってしまうのか?」というところですね。そして舞台としても、『オペラ座の怪人』がどのような結末を迎えるのかも期待して欲しいです。私個人としては、この作品に参加させていただいたことで、カトリナちゃんとともに、とても大きく成長できたという実感があります。ぜひ最後まで応援をよろしくお願いします。
長谷川 第十一場までご覧いただきまして、ありがとうございます。個人的にも第十一場は1番思い入れのあるエピソードで、 ここなとの海のシーンだけでも、『ワールドダイスター』に関わらせていただいた価値があると思っています。そんな第十一場をみなさんにお届けできたことをうれしく思います。そして最終回ですが、静香は出てくるのか、出てこないのか、気になるところですよね(笑)。個人的にはここなが静香の思いを受け取って、どんな役者としての姿を見せてくれるかを期待しています。ぜひ最終回を楽しみにしていただければと思います。
石見 第十一場まで『ワールドダイスター』を見てくださって、ありがとうございます。第十一場はとても大切なエピソードで、静香ちゃんとの関係性だけではなく、ここな自身が抱えていた大切なものを取り戻す話数でもあったと思います。最終話で静香ちゃんに再会することはできるのか、約束を果たすことができるのか。そして、ここなが演じるファントムの演技にも期待していただきたいです。本当にもう見どころしかありません。もはや絶対見ていただきたい! 最後までよろしくお願いします。