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2023.5.19

連続インタビューダイスター 第3弾: 石見舞菜香×長縄まりあ

──主演として挑む「アラビアンナイト」は、ここなにとって大きな試練となりました。

石見 満場一致で「八恵がアラジンになるだろう」と思われているなかで、ここなが主演に抜擢され、本来は彼女にとってチャンスになるはずでした。でも、自分らしさを失ってしまっただけではなく、「これでいいんだ」と満足していることに、空回り感があります。
象徴的なのは、今が楽しくて充実しているから、静香ちゃんの言葉に耳を貸さなかったことです。その根底にあるのは、ここなは自分に自信がないことだと感じています。だから「誰かに表現してもらう」、「誰かに任せる」という方向に逃げてしまって。

──ここなが現状で満足している展開はハラハラしました。

石見 八恵ちゃんから「ここなさんが演じるアラジンは、もう決まっています」と提案されて、素直に受け入れていますよね(第五場)。それは尊敬する八恵ちゃんの意見だから、ここなにとっては絶対的に正しかったんでしょう。その時点でここなは自分を見失っているので、静香ちゃんが不安を抱くのもわかります。

──静香はいち早くそのことに気付きますが、ここなは拒絶します。

石見 静香ちゃんはずっと一緒に過ごしてきた保護者のような存在ですから、「正論を突き付けられるのは嫌だ」と思ったんでしょう。

長縄 「今は来ないで!」ぐらいの気持ちを感じましたね。

石見 そうなんです。反抗と言いますか、「聞きたくない」という気持ちが現れていたと思います。口元は笑顔だけど、表情は傘で見えないのも、拒絶の意志を感じます。

──ただ、静香を拒絶することは、自分のセンスを失ってしまうことを意味しているので、それは役者として厳しい状況になります。

石見 2人で1人ですからね。静香ちゃんが欠けてしまっては、実力も出せない。第六場Bパートまで、静香ちゃんの存在を忘れていたということも、ここなの状況を表していると思います。

──「アラビアンナイト」では、八恵の演技も見どころとなりますが、そもそもどのようなキャラクターを目指したのでしょうか?

長縄 難しかったのは、常に主役を演じるような子でも、「嫌味にならないようにする」ということでした。「アラビアンナイト」では、自ら主演を降りますが、見え方によっては傲慢に見えてしまいます。
これは八恵の役作りから言われていたことですが、彼女は純粋にいい子なんです。ですから「人を気遣う」というよりは、言葉の端々や行動に純粋さが現れてしまうタイプ。「この子、何言ってるの?」と思われないように、とにかくポジティブさを意識しました。

──ここなが純粋に憧れ続けてきたことで、視聴者的にも違和感なく受け入れられた印象があります。

長縄 特に第六場の台本をいただいたとき、「どうすれば優しさとポジティブさと前向きさを、感じ取ってもらえるのだろう?」と悩みました。助かったのは、ここなさんと一緒にいると、八恵がとても純粋な子に見えるんです。そういう意味では、ここなさんと石見さんにずっと助けられてきたと感じています。

石見 二人とも素直に捉える人ですよね。お互いに尊重し合っていることが前提だから、純粋な関係になっているのかなと感じます。

長縄 私自身、ここなさんの気持ちに寄り添い過ぎてしまうところがありまして……。たとえば、ここなさんが落ち込んでいると、それにつられてネガティブな気持ちになってしまうこともありました。八恵の場合、同情しても、寄り添ってもいけないんです。理想は、自分がポジティブで輝いていくことで、周りの人も元気づけてしまうことなんです。

──そもそもダイスター候補の天才子役という設定もハードルが高いですよね。

長縄 それはもう、「どうしよう~」と悩みました(笑)。第一場でいただいたキャラクターの説明を見ながら、「11歳でみんなに慕われる優れた役者を演じるには、どうすればいいんだろう?」と。そこで自分のなかで腑に落ちたのは、彼女は11歳で「あらゆる人生経験をすでに積んでいるのではないか?」というイメージです。
人の痛みも苦しみも、11歳ですべてわかっている。人の悩みにも「大丈夫?」と共感するのではなく、「その悩みはこれで解決します」と解決策を提示できるような子。そのイメージなら、八恵を表現できるのではないかと思ったんです。

──女神のようなイメージを感じますね。

長縄 そんな空気がありますね。八恵は絶対に人生2周目です。

一同 (笑)。

──八恵も「ただワールドダイスターになりたい」というだけではなく、その先にある思いを感じさせる描写がありますね。

長縄 彼女はずっと完璧で、余裕そうに見えていますよね。でも、「必死になって頑張って目指していることがある」ことがわかって、親近感を持っていただけたら嬉しいなと思います。今後、彼女の「実現したい夢」が見えてくることで、いっそう人間性が現れてくるのではないかと思います。

──八恵が演じるランプの魔人役は、普段の雰囲気からガラリと変わって驚きました。ダイスター候補である八恵の実力を感じられた演技でした。

長縄 もともとオーディションで魔人の役がありまして、その通りに演じました。第五場では、普段の八恵のままで魔人を演じて「冗談です」と、すぐに切り替えるシーンが楽しかったですね。

石見 一瞬の切り替えが楽しかったです。

──第六場でおふたりのデュエット曲が流れましたが、こちらの印象についてもお聞かせください。

長縄 サビのキーが高くて難しかったですね。劇中劇の魔人役は男の子ですから、そのままで歌おうとすると、雰囲気が台無しになってしまうんです。曲自体が柔らかい印象で、絆が深まっていく内容だったので、とても悩んだ記憶があります。

石見 たしかに男性の役で歌うことが多いのですが、どうしてもキーが高くなってしまうのは悩みます。「演じているここなが歌っているんです!」ということをわかってもらいたいと思いながら、毎回悩んでいました。そもそも「竹取物語」の長縄さんの歌が上手すぎて、どうしようと思ったんです。「人生で経験したことのない技術が詰まっている!」と思って(笑)。

長縄 ちょうど収録をしていた時期は、個人的に歌を研究していたんです。「ワールドダイスター」は舞台がテーマということもあって、可愛らしいキャラクターソングとは異なる難しさがあると思うんです。舞台で歌っている雰囲気を意識してもらうことは大変でしたが、今までにない取り組みで楽しかったです。

──さて第七場は「アラビアンナイト」のクライマックスとなりますが、どんなところが見どころになりますか?

石見 静香ちゃんと手を取り合って、どんなアラジンを見つけ出すのか、そこが最大の見どころになると思います。

長縄 ここなさんと静香さんが元通りになったので、もう大丈夫という気持ちがありますね。第六場までの舞台以上に、「アラビアンナイト」はもう素晴らしいものになると思います。ぜひ楽しみにお待ちください。

──最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

石見 第六場までご覧いただきありがとうございます。これまでにキャラクターそれぞれに葛藤があり、関係値も変化してきましたが、劇団シリウスのみんなが真剣に舞台に取り組んでいることがわかっていただけたと思います。この先のエピソードでも、さらに深いところまで描かれていきますので、是非今後ともよろしくお願いします。

長縄 「ワールドダイスター」は、キラキラしている作品ですが、一筋縄ではいきません。舞台演劇に挑戦するという物語のなかで、その裏には努力や葛藤があるということが、とても実感できる作品だと感じています。個人的には、ここなさんを応援しながら楽しませていただいていますが、静香さんやカトリナさん、さすぱんといった、劇団シリウス全体の魅力も感じています。今後も一緒に劇団シリウスを応援してもらえたら、すごく嬉しいです。 よろしくお願いします。